
こんにちは、ファイナンシャルプランナーの橋本です。
「もし自分や家族が大きな病気になったら…」
頭のどこかでわかっていても、普段は考えたくないことですよね。特に、子どもがまだ小さいうちは、自分が倒れるなんて想像したくもない。
でも、医療の現場では日々、治療法が進化しています。ニュースで「最新のがん治療」「再生医療」といった言葉を耳にすることも増えました。
そんな“進化した治療”の中には、「先進医療」と呼ばれるものがあります。
ただ、「名前は聞いたことあるけど、実際はよくわからない」「お金がかかるんでしょ?」という方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな先進医療の“今”と“備え方”について、専門用語をできるだけ使わずにお話しします。
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<目次>
1.先進医療とは?
2.最近の先進医療の動向
3.先進医療を受けるための条件
4.保険で備えるという選択肢
5.お金の心配なく治療を選ぶために
6.おわりに:今できる“やさしい備え”から
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1.先進医療とは?
先進医療とは、簡単にいうと「まだ保険がきかないけれど、国が認めた特別な治療法」のことです。
厚生労働省が「安全性や効果を検証する価値がある」として承認しているもので、大学病院や特定の医療機関で行われています。
たとえば、
・がんに対する「重粒子線治療」や「陽子線治療」
・角膜を再生する「培養角膜移植」
・難治性疾患に対する「再生医療」
などが代表的です。
これらは最先端の医療技術であり、効果が期待できる一方で、まだ公的医療保険の対象にはなっていません。つまり、治療そのものの費用は全額自己負担になります。
ただし、「先進医療にかかる費用以外の部分(入院費・検査費など)」は健康保険の対象になります。
そのため、一般の治療費に加えて、先進医療にかかる追加費用を負担する形になるのです。
2.最近の先進医療の動向
① 治療技術の拡大と身近化
以前は「一部の大学病院だけ」「ごく限られた人だけ」という印象だった先進医療ですが、最近はかなり広がっています。
2025年9月1日現在、先進医療として厚生労働省に認められている技術は73種類にのぼります。
特に注目されているのは、がん治療分野です。
これまで「手術」や「抗がん剤」「放射線治療」が中心でしたが、
最近では体への負担を抑えつつ、ピンポイントでがん細胞を狙う陽子線治療や重粒子線治療が注目されています。
また、再生医療や遺伝子治療の分野も急速に発展中です。
たとえば、事故や病気で失われた組織や臓器を“再生”させる研究が進み、すでに実用化されているケースもあります。
つまり、「もしものときに選べる治療法」は確実に増えているのです。
② 保険適用への移行も進む
実は、先進医療の多くは、いずれ保険適用になる可能性があります。
実際、かつて先進医療だった「腹腔鏡手術」や「ロボット支援手術(ダ・ヴィンチ手術)」などは、今では保険が使えるようになりました。
これはつまり、「今は先進医療でも、将来的には一般的な治療法になる」可能性があるということ。
医療技術の進歩が速い現代では、“最先端”が“当たり前”になるまでのスピードも年々早まっています。
③ 治療費の平均も上昇傾向
一方で、治療費は高額になるケースが多いのも事実です。
たとえば、陽子線治療や重粒子線治療は1回あたり250万円〜300万円前後かかるといわれています。
もちろん、治療内容や回数によって金額は異なりますが、突然の出費としてはかなり大きな額ですよね。
先進医療は「確率的には受けることが少ない」ものの、「いざ必要になったときに払えるか」が現実的な課題になります。
3.先進医療を受けるための条件
先進医療を受けたいからといって、どこの病院でも受けられるわけではありません。
治療を行う医療機関は、厚生労働省から「先進医療実施医療機関」として承認を受けている必要があります。
つまり、受けるには以下のような条件があります。
・医師が医学的に適応と判断すること
・実施医療機関が先進医療の届け出をしていること
・患者本人が費用負担に同意していること
このように、受けるためには一定の手続きや条件が必要です。
しかし逆に言えば、「選択できる状況をつくっておく」ことができれば、いざという時の選択肢が広がるということです。
4.保険で備えるという選択肢
もし先進医療を受けることになった場合、先ほど触れたように、費用は数百万円単位になることもあります。
そこで役立つのが、「先進医療特約」と呼ばれる保険です。
これは、がん保険や医療保険にオプションとしてつけることで、先進医療にかかった技術料を全額カバーできるものです。
この特約は月々100円〜200円程度で付けられることが多く、非常にコストパフォーマンスが高い備え方といえます。
実際、ある調査では「先進医療特約を利用した人の平均給付額は約300万円前後」と報告されています。
もし備えがなければ、その分を貯金から出すことになります。
でも、教育費や住宅ローンなど、ほかの支出もある中で、突然数百万円の医療費を捻出するのは現実的に難しいですよね。
5.先進医療は“確率”ではなく“選択肢”の話
確かに、先進医療を実際に受ける方の割合は、全体から見るとごくわずかです。
でも、もし家族の誰かが病気になったとき、
「最善の治療を受けさせたい」と思うのは当然の気持ちではないでしょうか。
そして、その「最善の治療」を選べるかどうかは、経済的な備えがあるかどうかにかかっています。
つまり、先進医療の備えは「リスクの確率」ではなく、
「いざという時に選択肢を持てるか」という生き方の問題なのです。
6.おわりに:今できる“やさしい備え”から
医療はどんどん進化しています。
10年前にはなかった治療法が、今では実用化され、未来にはもっと選択肢が広がるでしょう。
けれど、どんなに医療が進歩しても、“その治療を受けられるかどうか”は、経済的な備え次第です。
「子どもが大きくなるまで元気でいたい」
「もしもの時にも、家族に迷惑をかけたくない」
そんな願いを叶えるために、今からできる小さな備えが“先進医療特約”なのかもしれません。
確率の問題ではなく、未来の自分と家族の選択肢を増やすための準備。
それが、これからの時代の「医療との上手な付き合い方」です。