
こんにちは、ファイナンシャルプランナーの橋本です。
人生の節目や家族のかたちを考えるとき、「養子縁組」という選択肢を目にすることがあります。とくにご自身が高齢になり、ご自身の資産や相続について考える方や、60代以上の親をお持ちの方にとって、養子縁組は意外な可能性をもたらすことがあります。
本記事では「普通養子縁組」を中心に、その仕組みや流れ、メリット・デメリットをわかりやすく解説し、実際の活用例にも触れていきます。
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<目次>
1.養子縁組とは(種類、特徴)
2.養子縁組のメリット
3.養子縁組のデメリット・注意点
4.税法上の法定相続人の数え方
5.手続きの流れ
6.活用事例
7.おわりに
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1.養子縁組とは(種類、特徴)
「普通養子縁組」は、親子関係をつくる手続きのひとつで、法律上の親子関係を新たに結びます。
【普通養子縁組】:実の親との関係は残したまま、新たに親子関係を結ぶ。
【特別養子縁組】:実の親との関係を切り、里親が法的な親権を持つ(主に児童福祉目的)。
本記事では、既存の家族関係を維持しつつ相続上の関係も生じる「普通養子縁組」について解説します。
2.養子縁組のメリット
**法定相続人が増える**
養子は相続人として数えられるため、相続分の配分が変わります。
**親族間での円滑な意思表示**
家族会議や遺言作成時に、法的な親子関係を背景に話しやすくなります。
**家族の絆を法的に確認**
気持ちをかたちに残せることで、安心感や連帯感が深まることがあります。
3.養子縁組のデメリット・注意点
**手続きの負担**
養子縁組届出書の作成や必要書類の準備などで、一定の手間と時間がかかります。
**実子との関係影響**
相続分の計算に影響があるため、実子との間で誤解が生じないよう配慮が必要です。
**将来の見直しが難しい**
話し合い(協議)で解消できない場合、調停や審判、または裁判で解消のための手続きをすることになります。
4.税法上の法定相続人の数え方
〇養子も実子と同じ「第1順位」の相続人
養子縁組をすると、民法上の親子関係ができるため、養子は実子と同様に相続人になります。順位としては「実子・養子」が第一順位となります。
〇相続税の基礎控除などで数に制限がある
相続税の基礎控除額(=3,000万円+600万円×法定相続人の数)や、生命保険金・退職金の非課税枠を計算するときには、「数えられる養子の人数」に上限があります。
・実子がいる場合:養子は1人まで
・実子がいない場合:養子は2人まで
5.手続きの流れ
①家族で話し合い:意向や相続の希望を確認。
②必要書類の準備:戸籍謄本などを取得。
③市区町村役場での届出:戸籍への記載変更手続きを行います。
手続きは専門家に相談するとスムーズです。
6.活用事例
**家業を継ぐ親族**
後継者として正式に家族の一員と認め、相続権を明確化。親族同士のトラブル防止にもつながります。
**家族以外の親しい方との絆を法的に結ぶ**
たとえば長年家事を手伝ってくれた親族外の方を養子に迎え、感謝の気持ちを形にするケースもあります。
7.おわりに
普通養子縁組は、法律上の親子関係を新たに結ぶ制度で、相続や家族関係を整理する有効な手段です。一方、手続きや相続分の再計算といった注意点もあります。まずはご家族でよく話し合い、公平で納得できるかたちを考えてみてください。必要に応じて、専門家のアドバイスを受けることで、より安心して進められるでしょう。
ご家族の未来を考える際に、選択肢のひとつとして養子縁組を検討してみるのも一案かもしれません。