
こんにちは、ファイナンシャルプランナーの橋本です。
人生100年時代といわれる今、資産をどのように次世代へ引き継ぐかが大きなテーマになっています。60代、70代を迎えられ、これからの暮らしとご家族の将来を真剣に考えている方。あるいは、60代以上の親御さんをお持ちの世代にとっても、「財産を守り、安心して渡したい」という思いは共通ではないでしょうか。
そこで今回は、資産承継の選択肢の一つとして注目されている「家族信託」について、わかりやすくご紹介します。
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<目次>
1.家族信託とは?
2.家族信託が向いているケース
3.家族信託のメリット・注意点
4.家族信託を始める前に押さえたいポイント
5.ケーススタディ:信託で叶えた“安心”の例
6.まとめ:家族信託は選択肢のひとつ、事前準備が大切
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1.家族信託とは?
家族信託は、信頼できる家族などに財産の管理と運用を任せる仕組みです。具体的には、財産を持つ人(委託者)が、受託者となる家族に財産の管理方法や使い道などを託し、最終的な受益者(利益を受ける人)を定めます。
ポイントは大きく3つ:
・誰に管理を任せるか(受託者)
・何を託すか(対象財産)
・いつ、誰に利益を渡すか(受益者、分配方法)
従来の遺言や成年後見制度と比べ、柔軟に組み立てられるのが特長です。
2.家族信託が向いているケース
具体的には、こんな方におすすめです。
・判断能力が低下するリスクに備えたい
・財産の管理・運用を任せたい家族がいる
・自宅不動産や自社株など、将来の処分が難しい資産がある
・遺言だけでは対応しづらい管理方法を取り入れたい
たとえば、認知症になった場合、成年後見制度を利用すると裁判所の許可が必要で手間がかかります。家族信託なら事前に取り決めることで、スムーズに財産管理が続けられます。
3.家族信託のメリット・注意点
【メリット】
・自分の意思を細かく反映できる
・家族の事情に合わせた分配方法が選べる
・専門家に依頼すれば契約書も堅牢
【注意点】
・委託者・受託者の信頼関係が前提
・手続きに司法書士や信託専門士の費用がかかる
・仕組みを理解しないまま契約すると後悔する可能性
メリットだけでなく、費用や手間、受託者との信頼関係もしっかり確認しましょう。
4.家族信託を始める前に押さえたいポイント
(1) 目的の明確化
「自宅を売らずに維持したい」「収益を平等に分配したい」など、何を実現したいかをはっきりさせましょう。
(2) 受託者の検討
管理能力や税務対応、仲間内の意見調整まで相談できる人が理想です。
(3) 専門家への相談
司法書士や税理士、信託専門士といった専門家に相談し、事例を聞きながら契約内容を詰めていくと安心です。
(4) 他の制度との比較
遺言、成年後見、生命保険など、ほかの手段も同時に検討し、自分に合う組み合わせを探しましょう。
5.ケーススタディ:信託で叶えた“安心”の例
Aさんは70歳。自宅と預貯金を持ち、二人のお子さんに将来渡したいと考えていました。しかし、二人で財産管理するのはトラブルのもと。そこで受託者を長女、受益者をAさん、さらに最終受益者を二人のお子さんに設定。Aさんが元気なうちは生活費を毎月受益、認知症などで判断能力が落ちた場合は、長女が決めた分配ルールに従って預貯金から必要に応じて支払いを続けられるようにしました。
結果として、Aさんもご家族も安心して暮らせる仕組みが完成しました。
6.まとめ:家族信託は選択肢のひとつ、事前準備が大切
家族信託は、資産承継の中でとても柔軟かつ強力なツールです。しかし、万能ではありません。契約には費用や手間、受託者との信頼関係など、クリアすべき点もあります。
大切なのは、「どんな状況になっても家族が困らない仕組みを先回りして作る」こと。家族信託は、そのための選択肢のひとつにすぎません。遺言や成年後見、生命保険などと組み合わせながら、自分やご家族にぴったりの方法を検討し、専門家を交えながら早めに準備を始めましょう。